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一 不真面目なまちづくり?
人口13万人、東京郊外住商混合地として発展した街。JR中央線が通り独特な文化を持つと同時に井の頭恩賜公園を有し住みたい街として必ず上位にランクされる街。これが武蔵野市吉祥寺という街です。この街の一画に、KISSCAFEという場はひっそりと存在し、その都市的実践を積み重ねてきました(現在はお隣の西荻窪にお引越しました)。この実践は、まちづくり運動のようにまちづくりに真正面から取り組んでいるというのではなくて、むしろそのような姿勢に対して斜に構えているようだ、というのがこの実践と場に出会った最初の印象でした。
“不真面目なまちづくり”とでもいえるこの実践の一端を示すことでこのことがご理解頂けると思います。
遡ること3年前の2007年の初夏、私はこのKISSCAFEと出会い、継続的に足を運ぶようになっていました。ある夜のこと、開口部を広く構え全面ガラス張りのファサードを持つKISSCAFEの中では、数人の男女がグラスを片手にタバコをふかしながら、何をするわけでもなく座っていました。しばらくしてから、白い壁一面にプロジェクターからの映像をあて、その光の中でなにやらひそひそと子供が悪戯を企むように楽しそうに話をし始めたのでした。
数日後、同じその場所は全く異なる様相を呈していたのです。老若男女が集まり、ある人は吉祥寺のお祭りの話に聞き入り、ある人はカウンターでグラスを傾けながら、それぞれ好きなようにその場所を使いこなしながら楽しんでいました。
実はこれは、吉祥寺秋祭りの地元主催者を、KISSCAFEに招いて行ったトークイベントとその開催を相談していたときの様子なのです。
このようなKISSCAFEの実践は、取るに足らない気まぐれな取り組みなのか?それとも、「『まちづくり』の新たな展望」(平井、2005)を拓き得る試みなのか?
まずはその概要からご紹介しましょう。
二 まちのリビング・都市的メディア
東京近郊都市である武蔵野市吉祥寺に、KISSCAFEという場所が出来たのは今から8年前です。このKISSCAFEの実践を担っているのが、NPO法人Kiss(以下、Kiss)。Kissは「豊かなまちをつくるために、文化的、創造的産業に携わっている会員たちが生み出す文化的ツールを媒介にして、新たなネットワークを創出」(Kissリーフレット)することを目的として、建築家やデザイナー、写真家などの専門家たちによって1999年に設立されました。KISSCAFEは、このKissの事業のひとつとして位置づけられています。
少し分かりづらいのですが、KISSCAFEとは、このKissの活動拠点でありコミュニティスペースであると同時に、<ヒトとヒトとをつなぎ新たなコトを起こす>実践そのものでもあります。そういう意味で、都市的メディアであるといえるのだと思います。言い換えると、匿名性を持った不特定多数の人が集う都市において、そういった人たちをつなぐ媒体となる場ということです。このようなことが、KISSCAFEのHPでは次のように紹介されています。
2002年4月、吉祥寺駅前のマンションの6階に、KISSCAFEはオープンしました。建築家やデザイナーなど専門的な知識のあるひとたちと共に、多くの方が改装に関わっていただき、セルフビルドで完成した空間では、毎週金曜と土曜の14時から22時までの間、カフェスペースとしてオープンするほか、平日や昼間にもトークショーやワークショップ、イベントが開催されました。そして2005年夏、KISSCAFEは一旦クローズ。これまでは、隠れ家的印象も強く、オープンなスペースとしてまだまだその役割を果たしていないと感じ、もっとたくさんの人たちに、もっと気軽に利用してほしい!そんな願いを込めて、路面にその場所を移そうと決めました。……こんにちは。はじめまして。おひさしぶり。元気?何してるの?ねぇねぇ聞いて・・・。『KISSCAFE』は、こんな会話からはじまる場所です。いつもそこに行くと、誰かいて、お茶でも飲みながら、デザインとかパソコンとか、まちの話とか、いろんな話ができる場所。とても気軽なんだけどすごく刺激的で、いつも新しい人や情報に出会える場所。それが、『KISSCAFE』。でも、普通のカフェとはちょっと違います。お店の人とお客さんという区別はありません。ここに来るすべての人に開かれた場所です。まあ、いってみれば、街中にあるみんなのリビング。いろんな人といろんな話をして、いろいろつながっていけるといいですね。
このようなKISSCAFEは、具体的には次のように運営されています。
【運営方法】
通常は、Kiss理事・事務局スタッフ・会員・ボランティアなどが、常駐して開けています。加えて、5万円/1人の債権購入をしたKISSCAFEオーナー会によって運営方針が立てられています。
【運営資金】
KISSCAFEの運営資金は主に次の4つで賄われています。
1つ目は、Kissの事業収入の一部です。
2つ目は、KISSCAFEオーナーの債権購入です。
3つ目は、簡単な飲食メニューの売上です。
4つ目は、KISSCAFE運営協力費です。自己表現の場でもあるKISSCAFEでは、設立趣旨に賛同・理解して頂いた方々が、次の3つの方法でイベントを開催することもできます。①Kissの会員になる(年会費3000円 個人会員の場合)・②KISSCAFEオーナー会に入る(5万円の債権購入)・③上記のメンバーの紹介(単発で利用したい人の場合)。この際に、KISSCAFEの維持・運営に充てる運営協力費を、次のいずれかの方法によってお支払い頂いています。⑴イベントの売上から原価を引いた利益の半分・⑵利用時間によって定められた金額。
(Day Time:10:00-17:5912,000yen/Night Time:18:00-24:59 14,000yen)
三 求められるコミュニティスペース
このような取り組みは、今まで公共領域を担ってきた行政からも求められているようです。例えば、武蔵野方式の市民参加のひとつである、コミュニティ市民委員会(第5期)からは次のような答申が示されました。
「構想」〔武蔵野市のコミュニティ構想〕の生まれた1970年代初頭は高度経済成長末期であり、良かれ悪しかれ「物質的な豊かさ」が中心となって社
会が回っている時代であった。そのような時代の中で、特に都市部において伝統を基盤とした地域共同体や地域住民同士のつながりが侵食され、「東京砂漠」と呼ばれるような状況が生まれつつあったからこそ、「構想」は「新しい近隣感覚」に基づいた柔軟で開放的なコミュニティの必要性をうたったのである。
だが、「構想」がいくら理想的なコミュニティ像を描いても、実際には市民の側に、それを実現するための条件が十分に整えられていなかった。仕事の忙しさは勤め人を地域から引き剥がし、コミュニティに関心をもつゆとりを奪い、コミュニティづくりへの参加の機会を与えなかった。その結果、コミュニティ活動をめぐって、そこに参加できる市民、参加せざるをえない市民と、参加できない市民、参加したくない市民との間の分業体制が形づくられてしまったのである。(武蔵野市第5期コミュニティ市民委員会,2000:3)
続けてコミュニティ市民委員会は、1990年代に入ってこれまでコミュニティづくりに関われなかった・関わりたくなかった人々が、コミュニティに関心を持ち始めていることを指摘し、「『コミュニティづくりの新たな担い手を求める市民』と『コミュニティづくりの新たな担い手になりうる市民、なりたい市民』との間に出会いの場」が必要との提案を挙げています(武蔵野市第5期コミュニティ市民委員会,2000:4-6)。そして、「『コミュニティづくりの潜在的担い手』がいつでも積極的な担い手としてコミュニティづくりに参加することができるような環境づくりに努めなければならない」とも言っているのです(武蔵野市第5期コミュニティ市民委員会,2000:4-6)。まさに、「やりたい人」と「できる人」のマッチングが求められているのではないでしょうか。
四 都市・街で/を楽しむ実践
そもそもKISSCAFE誕生の背景には、コミュニティ市民委員会が指摘したような状況がありました。というのも、この実践を始める動機に“居住していた場所を通して様々な人と関わりを持っていったにもかかわらず、具体的に街に関わっていく方法を持っていなかったこと”があるからです。8年間の変遷の過程を前史も含めて、いくつか時期区分してご紹介したいと思います。
【オンライン期:1997-2000】
KISSCAFE設立以前に、「吉祥寺Webマガジン」という地域情報サイトを作成したことが、この実践のスタートです。KISSCAFE設立には中心になった人物の、“自宅に友人や隣近所を招いてパーティーを開くと、人と人がつながっていって楽しいという原体験”がありました。このような経験が、街中でもできないかと考え、まずは吉祥寺で活躍している人と活動を紹介する顔の見える情報を載せたウェブサイトを作ったのです。
【ネットワーク形成期:2001】
ウェブマガジンを始めたことでいくつか仕事も発生してきたことから、1999年Kissを設立しました。この時期、Kissの事務所を借りながら、いよいよKISSCAFEの設立に向けて、物件探しや情報収集を始めます。ウェブマガジンの取材で訪れた、とあるデザイナーの交流イベントをきっかけとして、KIISSCAFEの理念に共感した仲間を得ることになりました。
【実験期:2002-2005.12】
住宅用マンションの6階の1室をリノベーションして、KIISSCAFEをオープンしました。マンションの6階ということで、カフェとしては機能しにくいということから、まずはKiss主催のイベントやワークショップなどを開催していくことになります。「やりたい人」と「できる人」のマッチングのために試行錯誤が繰り返された時期でした。
【定着期:2005.12-2009.11】
マンションから路面に場所を移転し、まちに馴染み定着していった時期です。ここでは「やりたい人」たちに場所を委ねることが多く、まちのリビング・都市的メディアとしての側面が明確になっていきました。特に、自己表現の場として多く利用されました。
五 西荻窪で再出発
道路拡幅計画によって、昨年末に設立以来、長年馴親しんだ吉祥寺を離れ、西荻窪にお引っ越ししてきたKISSCAFE。このまちではまだまだ新参者で、日々新たな運営方法模索する毎日ですが、少しずつまちのリビングとして定着してきています。
これからもKISSCAFEに乞うご期待です!
【引用文献】
平井太郎(2005)「裏返される『まちづくり』」,吉美俊哉・若林幹夫編『東京スタディーズ』:153,東京:紀伊国屋書店.
武蔵野市第5期コミュニティ市民委員会(2000)「第5期コミュニティ市民委員会答申」,東京:武蔵野市.
【参考文献】
『きちぼん』出版プロジェクト(2006)『きちぼん』,東京:ラトルズ.
神直子(2006)『未来の入会—コミュニティ・コモン』,東京:NPOメディア・ネットワーク.
※本文は、2007年度法政大学大学院政策科学研究科に提出した修士論文「質的変容をきたす東京近郊都市のまちづくりとその担い手―吉祥寺におけるKISSCAFEという都市的実践を事例に」を、加筆修正し簡潔にまとめ直したものです。
(NPO法人Kiss/KISSCAFE 事務局見習い:大石俊輔)
※冊子中小商工業研究号に掲載
2002年4月、吉祥寺駅前のマンションの6階に、KISSCAFEはオープンしました。
建築家やデザイナーなど専門的な知識のあるひとたちと共に、多くの方が改装に関わっていただき、セルフビルドで完成した空間では、毎週金曜と土曜の14時から22時までの間、カフェスペースとしてオープンするほか、平日や昼間にもトークショーやワークショップ、イベントが開催されました。
そして2005年夏、KISS CAFE一旦クローズ。
これまでは、隠れ家的な印象も強く、オープンなスペースとしてはまだまだその役割を果たしていないと感じ、もっとたくさんの人たちに、もっと気軽に利用してほしい!そんな願いを込めて、路面にその場所を移そうと決めました。
旧近鉄裏の駐輪場のお隣に、新しい居場所を見つけたKISSCAFEでは、ここを利用する人たちが自分のできることを提供し、
新しいKISSCAFEを作り上げていて行こうということになりました。
資金の調達、改装作業など、できることの種類はさまざま。
| ・ | 路面という場所の特性を生かし、広く一般の人も気軽に入ることのできるオープンなスペースでありたい。 |
| ・ | まちの中にあるリビングルームのようにいろんな人が利用できて、初めての人同士でも会話の弾むような場所でありたい。 |
| ・ | 会話の弾む場所として、新しいコトが生まれる場所でありたい。 |
| ・ | 誰もがカフェスペースのマスターとして参加できる場所でありたい。 |
そんな思いで、マイナーチェンジを重ねていきました。
年末から新年にかけての大改装で本格的な厨房機器も入り、本気モードのカフェ展開も可能な、新しいスペースとして生まれ変わりました。2月には保健所の許可もおり、リニューアルグランドオープンに向け、準備は順調。カフェオーナーやカフェマスターも集まり始めました。
新しいKISS CAFEでは、さまざまなマスターが独自のテーマでスペースを運営します。
「カフェをやってみたーい!」「お気に入りの音楽をかけてバータイムを演出したい」「朗読会を開きたい」など、飲食店からライブイベント、ワークショップなど、あなたがずっとやりたかったコトをKISS CAFEで実現させてみませんか?
KISS CAFEオーナー会員、
シェアードカフェマスターを募集しています。
旧近鉄裏という吉祥寺では特異なエリアで、
CAFEという形態のコミュニティスペースを運営することで、
人と人、人と街のコミュニケーションが生まれ、
そこに、新しい文化的な「コト」が生まれる
そんな場づくりを目的としています。
非営利とは営利を目的としていないということで
その目的を達成させるための資金調達を行う事業は収益事業となります。
収益事業の利益は、目的の達成のための経費に使われます。
KISSCAFEの収益は、KISSCAFEの維持のために使われています。
KISSCAFEは、NPO法人KISSの一事業として
KISSCAFEオーナー会員により運営されている非営利事業で
営利を目的とした事業ではありません。
KISSCAFEの運営費は、オーナー会費と皆様からの債券により賄われています。
「KISS CAFE」は、特定非営利活動法人Kiss の会員の中でコミュニティスペースの運営に関心を持つ人が自主的にメンバーとなり、運営を行っています。運営スタッフはワークショップやイベントごとにプロジェクト委員会を設け、実施にむけて活動しています。なお、毎日の朝7時から翌朝6時までのオープンなコミュニティスペースとして開放中はナビゲーター、またはカフェマスターとして、会員以外の多くの方にもご協力を頂いています。「KISS CAFE」は、この場所を使いたい人の自主的な活動で成り立っています。運営に参加したい人は、気軽に声をかけてくださいね。 info@kiss.or.jp
あなたの近くには、建築家とか、デザイナーとか、職人とか 生活まわりの環境や、空間や、日用品にかかわる仕事をしている人がいますか?
「KISS CAFE」は、そんな身近なつくり手と、吉祥寺に生活している人たちが、気軽に出会える場所にしたいと思います。まずは、お茶でも飲みにきてください。そして、そこにいる人と話をしてみましょう。難しい話じゃなくて、毎日の生活の中で、不満に思うことや、もっとこうなったらいいのにといった話から、デザインははじまります。
また、「KISS CAFE」では、デザインに関連した展覧会やセミナー、ワークショップ、研究会、交流会なども随時開催していきます。気になるテーマがあったら、ぜひ、参加してみてください。
こんにちは。 はじめまして。 おひさしぶり。元気? 何してるの? ねえねえ、聞いて・・・。「KISS CAFE」は、こんな会話からはじまる場所です。いつもそこに行くと、誰かいて、お茶でも飲みながら、デザインとか、パソコンとか、まちの話とか、いろんな話ができる場所。とても気軽なんだけどすごく刺激的で、いつも新しい人や情報に出会える場所。それが、「KISS CAFE」。でも、普通 のカフェとは、ちょっと違います。お店の人とお客さんという区別はありません。ここに来るすべての人に開かれた場所です。 まあ、いってみれば、街中にあるみんなのリビング。いろんな人といろんな話をして、いろいろつながっていけるといいですね。